1978年7月の蓮池薫さん(49)夫妻拉致事件で、実行犯として国際手配されている通称「チェ・スンチョル」工作員に、北朝鮮の諜報(ちょうほう)機関「対外情報調査部」の指導員2人が直接、拉致の実行を指示していたことが、警察当局の調べなどで分かった。
蓮池さんは拉致後、この2人から「狙いは女性だった」「お前は一緒にいたから連れてきた」と説明されていた。政府認定の計12の拉致事件(被害者17人)では、実行犯6人が特定されているが、北朝鮮で拉致を命じた指示役の存在が判明したのは初めて。警察当局は、2人の身元を最終確認するため、情報収集を急いでいる。
警察当局の調べや関係者の証言によると、チェ工作員に拉致を指示していたのは、それぞれ「キム・ナムジン」「ハン・クムニョン」と呼ばれていた指導員。
拉致された蓮池さんは、このうちキム指導員と飲食をともにした際、「連れてこいと言ったのはおれだ」と拉致の指示役だったことを明かされた上、「女性を狙えと言ったが、お前も一緒にいたので拉致した」との説明を受けていた。
また、実行犯のチェ工作員から、「蓮池さん夫妻の拉致に成功したことをハン指導員に無線で報告した」と明かされ、ハン指導員からは、貿易代表団の一員として日本に入国したことがあるなどの話も聞かされたという。
両指導員は当時、対外情報調査部の課長級の幹部。北朝鮮は拉致を認めた2002年9月の日朝首脳会談直後、拉致事件の責任者を死刑などにしたと説明したが、警察当局では、2人は現在80歳前後で北朝鮮内で暮らしているとみている。
蓮池さんが、妻の祐木子さん(50)とともに新潟の海岸で拉致された78年7月は、地村保志さん(51)、富貴恵さん(51)夫妻も福井で拉致され、翌8月には鹿児島で市川修一さん(当時23歳)、増元るみ子さん(同24歳)の2人が拉致されている。
今回判明したキム指導員らの発言と同じく、韓国で85年2月に身柄拘束された北朝鮮工作員も、「対外情報調査部から78年春、若い日本人女性を拉致するよう指示された」と供述、北朝鮮がこの時期、日本人女性を狙った拉致を画策していたことを明らかにしていた。
警察当局は、78年6月に拉致された田口八重子さん(当時22歳)が女性工作員の教育係だったことなどから、12件のうち、少なくとも蓮池さん夫妻ら3件のアベック拉致は、教育係となる女性の獲得が目的で、男性が一緒にいた場合、女性が北朝鮮で暮らしやすいよう一緒に連れ去った可能性が高いとみている。今後は、今回明らかになった指示役2人が、他の拉致にも関与していないか調べを進める方針だ。(2007年1月12日読売新聞)
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諸警察の方々の地道な忍耐強いご努力に、敬意を表します。
これからも、頑張ってください。