政府は27日、北朝鮮が9日に発表した核実験について「核実験を行った蓋然(がいぜん)性が極めて高いと判断するに至った」として、核実験の実施を事実上認定する見解を発表した。
日本の観測した地震波や米韓両国の分析などを総合的に判断した結果だ。ただ、政府は、北朝鮮を核保有国とは認めない方針だ。
政府は、9日の核実験発表以降、航空自衛隊機による大気中の放射性物質の採取や都道府県による放射線観測など独自の調査を進めてきた。核実験を断定する材料は見つかっていないが、〈1〉米韓両国が核反応に伴う放射性物質を採取し、核実験実施を確認した〈2〉気象庁の観測で通常の地震波とは異なる地震波を観測した〈3〉北朝鮮が自ら核実験実施を公表した――などの点から総合的に判断。27日に開いた関係省庁の専門家会議などで核実験実施の蓋然性は極めて高いと結論付けた。
政府が北朝鮮を核保有国とは認めないのは、米国は核実験を失敗と認定している上、北朝鮮を核保有国と認めれば、北朝鮮に「核カード」を与えることにもなりかねないためだ。
政府がこの時期に見解をまとめたのは、米韓両国に加え、中国やロシアも「核実験は行われた」とする立場を取っていることから、6か国協議参加国と足並みをそろえ、対北朝鮮包囲網をさらに狭める狙いがある。今回の見解を受けた新たな制裁措置は当面、発動しない方針だ。
その理由について安倍首相は27日夜、首相官邸で記者団に「事実上、(北朝鮮が)核実験を行ったという前提で、日本はすでに制裁措置を取っている」と強調した。
一方、塩崎官房長官は同日の記者会見で「(日本の)安全保障上、北朝鮮をどういう国と見るかは、今までとは少し変わるかも知れない」と述べ、北朝鮮が将来保有する可能性も視野に対応する考えを強調した。政府は当面、防衛大綱や中期防衛力整備計画の見直しには踏み込まない方針。政府筋は「北朝鮮が核能力を持ちつつある国であることは明らかになった。情報収集の強化を含めて、今まで以上に脅威を与える存在として見なければならない」と指摘した。(2006年10月27日読売新聞)