かいふう

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kaihuuinternet2006-12-29

[06回顧・世界]「不安定化が進んだ1年」

国際社会の不安定化が進んだ年だった――2006年は世界の人々に、そう記憶されるのではないだろうか。

身勝手な論理をかざして核開発へと突き進む北朝鮮、泥沼のイラク情勢の対応に苦悩する米国、混迷を深める中東和平……。本紙の読者が選んだ「海外10大ニュース」の上位には、世界や地域を不安定にしたこの1年のニュースがずらりと並んだ。

国際社会は不安と戸惑いの中、視界不良の07年を迎えようとしている。

◆現実となった「悪夢」

北朝鮮の核実験という「悪夢」が一気に現実となった1年だった。

北朝鮮は7月、日本海方面に向けて長距離弾道ミサイルテポドン2号」を含むミサイル7発を発射した(3位)。10月には、北朝鮮北東部の実験場で、初の地下核実験を行った(1位)。

国際社会は、度重なる自制要求を無視してミサイル発射、核実験に踏み切った北朝鮮を強く非難した。国連安全保障理事会は、大量破壊兵器物資の移転阻止のための貨物検査や金融制裁などを柱とする制裁決議を採択した。

「北」の核ミサイルの深刻な脅威にさらされる日本が先導し、北朝鮮が「盟友」と頼む中国やロシアも賛同しての初めての制裁決議だった。

対「北」圧力の高まりを受け、12月には約13か月ぶりに、6か国協議が再開した。だが、北朝鮮は徹頭徹尾、米国の「金融制裁」解除に固執し、何の成果もないまま休会となった。

保有国」の立場を誇示する北朝鮮に核廃棄をどう迫るか。来年も地域の最大の不安定要因となり続けるだろう。

イランの核開発も、北朝鮮に劣らぬ深刻な問題だ。イランは2月、ウラン濃縮の事実を公式に認めた(15位)。国連安保理は12月、初めての制裁決議を全会一致で採択した。

だが、核開発を譲れない権利と主張するイランは制裁決議を「紙くず」と一蹴(いっしゅう)し、核開発継続の姿勢を崩さない。

◆袋小路の米国外交

唯一の超大国として国際秩序維持のカギを握る米国では、政治の勢力図が変わった。11月の中間選挙で、野党・民主党は、12年ぶりに上下両院の多数を占めた(5位)。同時に行われた知事選でも、民主党が躍進した。

ブッシュ共和党政権の敗因は、混迷するイラク情勢に尽きる。

そのイラクでは5月、前年末の国民議会選挙で勝利したシーア派政党連合のマリキ氏を首班とする本格政府が発足した(11位)。11月にはイラク戦争で政権を追われた元大統領サダム・フセインに住民虐殺など「人道に対する罪」で、死刑判決が言い渡された(6位)。12月には死刑が確定した。

憲法制定や本格政権樹立といった目標は一応達成したものの治安は回復せず、宗派抗争は激化の一途だ。「もはや内戦状態」との指摘も多い。開戦以来の米軍人の死者は3000人に迫る。

ブッシュ政権はどう袋小路から抜け出すのか。政権が進めている政策見直し作業に注目が集まっている。

世界各地で、テロがやまない。

インド西部のムンバイで7月、列車同時テロが起き、179人が死亡した(10位)。英国では8月、航空機爆破テロ計画が危うく阻止された(13位)。犯行に及んでいれば、前年のロンドン同時爆破テロに続く惨事となるところだった。

プーチン大統領を批判していた露連邦保安局(FSB)元中佐のアレクサンドル・リトビネンコ氏が亡命先のロンドンで死亡した事件は、特異な放射性物質による殺害と分かった(9位)。露情報機関の関与を指摘する声も出ている。

前年来の原油高が一段と進んだ。7月には77ドルを突破し、最高値を更新した(7位)。中国の旺盛な需要に加え、イスラエルレバノン侵攻(16位)といった地域紛争が押し上げ要因となった。

鳥インフルエンザの拡散が止まらない。総死者数は3月100人、10月末に150人を超えた(8位)。

23万人の犠牲者を出した04年インド洋津波震源地、インドネシアで5月、またも大地震が発生、ジャワ島中部の住民約6000人が死亡した(2位)。フィリピンでは2月、大規模な地滑りで1100人以上が犠牲となった(22位)。

◆科学界でも大事件

科学界でも大事件があった。国際天文学連合(IAU)は8月のプラハ総会で冥(めい)王星を太陽系の惑星から除外し、新設の矮小(わいしょう)惑星に分類した(4位)。1930年に発見された冥王星の降格は、世界の教科書業者を慌てさせた。

韓国では、世界で初めてヒトのクローン胚(はい)からES細胞を作ったとする黄禹錫ソウル大教授が、論文を捏造(ねつぞう)していたとして摘発された(14位)。日本でも年末、東大教授が論文捏造疑惑で懲戒解雇された。人ごとではない。

不安定さを増す国際社会を安定軌道にどう誘導するのか。07年は節目の年となるかもしれない。(2006年12月29日読売新聞・社説)
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