かいふう

近未来への展望や、如何に。

中山恭子・首相補佐官が訪中で、日本側への協力を検討。

【北京=佐伯聡士】北朝鮮による日本人拉致問題の進展に向けて、中国が独自の情報ネットワークを使って拉致被害者や失踪(しっそう)者に関する情報を収集するなど、日本側への協力を検討していることが27日、分かった。日中関係筋が明らかにした。

拉致被害者の情報収集については、特定失踪者の一部(数十人規模)にも調査範囲を広げ、まとまった段階で日本に提供する考えだという。また、拉致被害者である横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんを金日成総合大学から、北京大学修士課程に受け入れ、横田滋さん、早紀江さん夫妻との面会を容易にすることなども検討中という。さらに、北朝鮮がめぐみさんの「遺骨」として日本側に渡した骨も、中国の専門家が再度DNA鑑定を行う案が浮上している。

中国側はこれまで、拉致問題は日朝間で対話を通じて解決すべきだとの立場を示してきたが、今月訪中した中山恭子首相補佐官拉致問題解決の重要性を説明した際、武大偉・外務次官は「条件作り、環境作りができるよう努力していこうと思っている」と語っていた。

拉致問題を進展させることが、6か国協議で、対北朝鮮エネルギー支援などのプロセス進展にプラスになると判断した模様だ。また、温家宝首相の訪日成功後、軌道に乗った日中関係の強化にも、一層弾みがつくとの思惑があるとみられる。

ただ、中国側の情報提供などをめぐっては、北朝鮮側が内政干渉として反発する可能性もあり、中朝間の調整が実現のカギとなりそうだ。(読売)
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《 戦略情報研究所メールニュース Vol.92 平成19年5月28日》

※以下は本日発信した会員向け「おほやけ」136号と同じ内容です。

■「やさしい」日本人

                   青木直人(ジャーナリスト)

日本人は中国情報に対して甘いとしか言いようがない。ウラを読むというクールさがなく、主観的かつ情緒的な読み方をしてしまいがちなのだ。

読売新聞が報じた拉致問題に中国が協力という報道に対して「救う会」と「家族会」が出した声明を読めばそれは一目瞭然である。出口の見えない拉致問題の現状に対して家族の方々がいらだちとすがるような思いをもちがちなのは十分に理解できるのだが・・・・・。

中国の意図を推し量る際に、念頭におくべきは以下の点である。

(1)朝鮮問題の「解決」は中国の東アジアにおける覇権的な政治経済共同体設立のための第一歩となっている。北京政府は「北朝鮮問題」を中国の国益をベースにして解決するとの強い意思をもっている。日朝正常化は中国外交にとって大きな利益をもたらすだろう。

(2)報道されている「日中関係筋」のリークの事実関係がいまひとつわからないが、この話が事実とすれば、これは中国側の焦りをあらわすものである(同時に手詰まり状態にある安倍政権に近い筋が意図的に流して可能性も高い)。

武大偉次官らが関わる日朝正常化交渉の遅延が党内で問題視されている可能性もある。中国の政局は5年ぶりに開催される10月の共産党大会がらみで動いているからだ。

(3)今大会は江沢民から胡錦涛へのリーダーシップ転換の大会となる。胡路線の特色として「和解社会」と「国際社会との協調」が強くアピールされる。内外での摩擦を避けようという臥薪嘗胆の姿勢である。
後者の外交的なシンボルが朝鮮半島の緊張緩和実現であり、日朝正常化により可能となる日本からの経済支援も緊急性を帯びはじめている。だが、ここで引っかかるのが日本人拉致問題である。安倍首相の第二回目の中国訪問が大会と同じ時期に計画されている。

それだけに今からの「中国の拉致解決への努力の姿勢」は不可欠である。

なぜなら訪中では日本からの環境経済支援が具体的なテーマになるからである。

ニュースをリークした関係者は日本からの対中援助が日本国内から「中国の不誠実さ」を理由にして批判の遡上にあげられることを危惧したのかもしれない。

(4)中国が北を怒らせてまで現状では日本に「協力」することは考えにくい。これは日本がなんら物理的な圧力を中国にかけてはいないからだ。だとすれば、現実にはピョンヤン政権を刺激してまで、彼らが日本のためになにかをすると考えるのは幻想である。中国の本音は拉致切捨てにある。報道の背後にある思惑は日本の世論動向を見るためのアドバルーン効果をもくろんだものかもしれない。

いずれにしても今後は家族会の動向が注目である。中国政府は家族会(「救う会」「調査会」)と直接接触を図ろうとしているからだ(事実ある日本人関係者がひそかにコンタクトを取ってきた)。

全面的解決は彼らの念頭には最初から存在していない。ここを崩せば日本の世論は分断できる。

日本政府内部のある勢力も中国のこうした「協力」を歓迎している。彼らも拉致の全面的解決の勇気は持っていないからだ。

繰り返す。この報道はそうした日中関係者の互いの利益を踏まえたデキレースの可能性も否定できないのである。中国は北を刺激しないという範囲で「協力」をしてくる可能性はある。

それが拉致被害者・失踪者の調査報告であり、へギョンさんの北京大学留学であり、ニセ遺骨の中国での再鑑定という結果次第では諸刃の刃になりかねない提案なのである。調査結果が「日本人全員死亡」であり、「ニセ遺骨ではない」であり、ヘギョンさんの口から「母は死にました」だとなると、これは6者協議開催国中国政府の正式な調査結果という「権威」を持ちうるのである。事実かどうかはその時点では重要ではないのだ。

最初に「甘い」と書いたのは、こうした提案を聞いて、直ちに、中国が日本の味方になってくれるのでは、と信じ込んでしまう私たちの脇の甘さなのだ。あるいは中国が北に圧力をかけてくれると期待してしまうおろかさなのだ。

中国が協力の代償としてつきつけてくる請求書に書かれた金額は決して低額なものではすまないだろう。

中国がタダでなにかをしてくれるかどうか、中国人に聞いて見たらどうか。

これが「善意」であろうはずはない。リアルなソロバン勘定であり、むき出しの国益そのものだ。

この報道に意味があるとすれば現状に対してあせっているのは我々以上に、実は北京政府の側であるという事実があきらかになったことだ。

それにしても「救う会」もニュースをありがたがっている場合ではなかろう。これでは単に「安倍政権を救う会」である。「朝鮮屋」は純情なのか、無知なのか、それとも腹にイチモツなのか。<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
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青木直人氏の言を、転載しました。
つい、学生時代の漢文の熱心な教師の方を思い出して、李白陶淵明の世界に誘われてしまうのだけれど、現代中国はちがうのですね。
拉致事件の性格そのものと範囲が特定されます。