かいふう

近未来への展望や、如何に。

ブルドックが裁判所に入る、は初。

一般株主の圧倒的多数が、目先の利益ではなく、企業の長期安定成長に軍配をあげた。日本の資本市場の健全性が浮き彫りになったのではないか。

投資先企業に買収防衛策の撤回や大幅増配を求めている米系投資ファンドスティール・パートナーズ・ジャパンが、株主総会で連敗している。

ティールの株式公開買い付け(TOB)に対抗する防衛策導入の是非が問われたブルドックソースの総会では、約8割が会社提案の防衛策を支持した。より強い効力を持つ特別決議に必要な「3分の2以上の賛成」を大きく上回った。

大幅増配が争われたブラザー工業因幡電機産業では、スティールの株主提案が、いずれも大差で否決された。

一連の総会の前、来日したスティールのリヒテンシュタイン代表は「我々は経営者との関係を重視する長期的な投資家だ」「日本の防衛策は世界最悪だ」などと述べた。ブルドックの株主にも、防衛策に反対することが「長期的な会社の利益になる」と支持を呼びかけていた。

だが、その株主は「百年を超える企業に土足で入ってくるところは許せない」「具体的な経営構想を示していない」などと、スティールに強い反感を示した。株式を買い集めて強引な要求を突き付ける手法への拒絶反応と言えるだろう。

総会は乗り切ったものの、ブルドックにはまだ難関が残されている。スティールが、防衛策発動の差し止めを求める仮処分を東京地裁に申請したからだ。

ブルドックの防衛策は、〈1〉7月10日現在の株主に1株につき3株の新株予約権を割り当てる〈2〉ただし、スティールには権利の行使を認めず、ブルドックが約23億円で予約権を買い取る――というものだ。発動されれば、スティールの保有比率は約10%から3%未満に下がる。

買収の動きを受けた防衛策については東京高裁が2005年、ライブドアに対するニッポン放送の防衛策を巡る裁判で経営者に厳しい判断を示している。

買収者が自らの利益のために、会社の解体など企業価値を壊そうとしている場合を除き、事後的な防衛策は経営者の保身に当たり「著しく不公正」とした。

ブルドックの裁判では、東京地裁がスティールの投資手法をどう判断するか、8割の賛成を集めた特別決議の重みをどう評価するか、などが注目される。

日本企業2社がスティールに初めてTOBを仕掛けられた03年、動揺した2社は法外な増配に追い込まれた。防衛策で対抗するようになったのは一つの進歩だが、経営者はそれに安住せず、株主の支持を得るための努力を続けるべきだ。(読売・社説)