かいふう

近未来への展望や、如何に。

政策としての、下請け取引の適正化。

大企業が優越的な立場を利用し、部品の買いたたきなど不適正な取引を下請けの中小企業に強いる。そんな下請けいじめが相変わらず横行している。

上場企業が史上最高の利益を更新する中で、中小企業の回復は遅れている。日銀の3月の企業短期経済観測調査(短観)でも、中小企業・製造業の業況判断指数はプラス8にとどまり、大企業・製造業のプラス23と差がついた。

政府は、下請け取引の適正化を「成長力底上げ戦略」の柱の一つに位置づけ、中小企業の底上げをめざす。6月にまとめる「骨太の方針」に盛り込む。

中小企業の立場は相対的に弱い。製造コストが上昇しても、大企業との取引価格に転嫁しにくい。下請け代金の支払いが遅れる例もあるという。

これでは、大企業が業績を伸ばす一方で、中小企業にしわ寄せがいく。企業努力や技術開発で生産性を向上しても、利益が増えない。賃上げも難しくなる。

日本経済の活力を維持し、本格的な景気回復を実現するには、元気な中小企業を増やす必要がある。

下請け取引については、優越的な地位の乱用を禁じた独占禁止法を補完する下請法がある。公正な取引慣行を確保するため、大企業が中小企業に対して、代金の支払い遅延などの取引を強要することを禁じている。経済産業省が違反を確認すると、公正取引委員会に是正措置を請求し、公取委は企業に勧告する。

東芝子会社の照明器具メーカー、東芝ライテックが、下請け業者に値引きを強要していたことが今春、発覚した。公取委からの是正勧告を受けて、同社は値引き分を返還するとともに、再発防止策もまとめた。

経産省がこの措置を公取委に請求したのは3年半ぶりで、請求段階で社名を公表したのも初めてだった。

政府は、独禁法や下請法を積極的に運用し、下請け保護への監視を強化すべきだ。企業名の公表も、一罰百戒の意味から、ためらうべきでない。

経産省は、多くの下請けを抱える情報通信機器、自動車、繊維と、ソフトウエア、アニメ、ゲームなどのコンテンツ産業に対して、適正な取引指針を自ら作成し、それを順守するよう求めている。

金型などの素形材産業は、昨年、指針案を策定済みだ。各業界も早急に、それぞれの指針をまとめ、適正な取引を徹底させるよう努めるべきである。

大企業と、取引先の中小企業が“共存共栄”してこそ、日本経済の底上げにつながる。がんばる中小企業の足を引っ張らないことが大事だ。(読売・社説)