かいふう

近未来への展望や、如何に。

奈良県で妊婦が救急車内で死産。

産科の緊急医療体制の欠陥がまた、悲劇を招いた。

奈良県の妊娠7か月の女性が大阪府の病院へ運ばれる途中、救急車内で死産した。九つの病院に受け入れを断られ1時間半も搬送先が決まらなかった。

奈良県では昨年8月、公立病院で分娩(ぶんべん)中に意識不明になった妊婦が19病院に受け入れを拒否され、死亡している。

妊婦のたらい回しは、首都圏をはじめ全国で起きている。今回のような例は氷山の一角ではないか。一刻も早く、妊婦や新生児の緊急搬送システムを構築し、お産の安全を確立することが必要だ。

奈良県の妊婦は未明に出血した。通報を受けた消防は、奈良県立医大病院に受け入れを要請したが、宿直医が診察中などという理由で要請を3回断られた。

しかし、空きベッドはあった。なぜ受け入れられなかったのか。窓口の職員と医師が十分に意思疎通できていたのかどうか。仮に医大病院が無理だったとしても、消防と協力して、別の受け入れ先を探すことができたのではないか。

やっと40キロ離れた大阪府高槻市の病院を見つけたものの、搬送中の救急車が事故に遭い、到着は通報から3時間後になった。もっと早く搬送できていれば、胎児は助かったかもしれない。

奈良県大阪府は、空きベッドの有無や医師が対応可能かどうかをパソコンで確認する産科病院の相互支援ネットワークを、それぞれ設けている。

だが、ネットワークは、病院間での搬送が前提になっていて、医師が病状を確認していないと、搬送のシステムが動き出さない。今回の妊婦のように、かかりつけの医師がなく、消防から直接要請を受ける場合は想定していなかった。

重篤な患者については、救急車からの要請にも対応できるよう、運用を改善すべきではないか。

奈良県は、リスクの高い妊婦や胎児を専門的に診療する「総合周産期母子医療センター」の設置も遅れている。

厚生労働省は、今年度中に全都道府県が整備するよう求めてきたが、奈良県医師不足から、山形、佐賀、宮崎の3県とともに来年度以降にずれ込みそうだ。こんな地域格差があってはならない。

産科医不足は深刻だ。2004年までの10年間で7%も減り、1万人余になった。出産を扱う医療機関も05年までの12年間に1200施設が閉鎖された。

厚労省は来年度予算の概算要求に医師不足対策費160億円を盛り込んだが、養成には時間がかかる。当面の対策として、自治体や医療機関が緊密に連携した広域的な救急体制を整備すべきだ。(読売・社説)
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奈良県橿原(かしはら)市の妊娠中の女性(38)が相次いで病院に受け入れを断られ、死産した問題で、3度の受け入れ要請があった県立医大病院(橿原市)は31日、病院のホームページ(HP)に、救急隊とのやりとりや産婦人科の当直医2人の勤務状況を公表、院長名で「誠に遺憾」とした上で、「当直医は過酷な勤務状況だった」とする文書を掲載した。

HPには、病院の対応状況を分単位で記載。最初の受け入れ要請があった際、当直医が「お産の診察中で、後にしてほしい」と事務員に返答したことや、緊急入院の患者が相次いでいた状況、当直医2人が一睡もしなかったことなどを説明している。(読売)
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また奈良県か、と浮かんだ。覚えていたんだ、一年前の妊婦死亡事件を。その時の月の記載を遡ってみたが、見つからない。載せた記憶だったが。
二度目ともなると、載せねば、とおもう。今回は胎児が死亡。
どちらにせよ、助かったかも知れぬ生命をなんで、とおもう。
少年時、自宅に来た助産婦さんの笑顔を今でも思い出す。それは、陣痛の当事者だけでは不安な、出産という出来事に不可欠な職業。
なぜか、当時の大相撲横綱吉葉山の顔に似ていたと感じたのは、妊婦のお腹が大きくなるのと、関取のお腹のイメージが重なるからだろう。
何度か助産婦さんの笑顔を浮かべた時、また生きる希望が起こるのは、粗末にしてはならないという訓戒を、彼女への敬愛がそうさせるのだろう。
そういう思いを抱く命が、亡くなったことを、悼む。