かいふう

近未来への展望や、如何に。

自民党のプロジェクトチーム(PT)が、事件の被害者救済法案の骨子を。

本来は、オウム真理教が支払うべき被害者への賠償金を、国が立て替える――。極めて異例の対応である。無差別テロの被害者に十分な補償がなされない現状を考えれば、必要な措置といえるだろう。

だが、今後もテロは、いつ起きるか分からない。万一の際に、テロの被害者を救済する具体的な手だての検討も必要ではなかろうか。

自民党のプロジェクトチーム(PT)が、オウム真理教による一連の事件の被害者を救済する法案の骨子をまとめた。教団には支払い能力がないことから、被害者は、賠償金を全額は受け取れない可能性が高い。このため、国が未払い分の25億円を負担し、「見舞金」などとして被害者に支給する。

オウム真理教は、松本サリン事件や地下鉄サリン事件などの重大事件を引き起こした。教団には被害者からの損害賠償請求などに応じる資力がなく、1996年に破産宣告を受けた。債務総額は51億円、このうち被害者や遺族に対する賠償金としての債務が38億円に上った。

オウム事件の重大さと、後に残した問題の大きさを物語る債務額である。

破産管財人は教団施設を売却するなどして、被害者への賠償に充ててきた。だが、これまでに支払われた賠償金は、13億円にとどまっている。破産手続きは来年3月で終了する見通しだ。

このままでは、被害者救済はままならない。事件から既に10年以上が経過している。犯罪被害者給付金制度があるが、これでは、給付額が十分ではない。

米同時テロの被害者に対しては、米政府が特別立法により補償を行い、遺族には平均で約2億円が支払われた。

一方で、巨額の公費を投じるためには、だれもが納得できる理由が必要だ。

自民党PTは、オウム事件の特殊性を救済法制定の根拠にしている。オウム事件は、国家転覆を狙った犯罪で、被害者は国の身代わりとなったこと、さらに、被害者が損害賠償請求訴訟などの自助努力を尽くしたこと――などを具体的理由とすべきだという意見もある。

自民党は、来年の通常国会に法案を提出する方針だ。民主党も同様の法案の提出を検討している。超党派で協議を進め、早期に救済法を成立させるべきだ。

テロは未然に防ぐのが、最も重要である。だが、万一の時に、被害者を迅速に救済できる体制も整えておくべきだ。

国は、どのような場合に補償金を支払うのか。自民党PTの論議も踏まえ、法務省警察庁など関係省庁で、指針などの策定を進めるべきではないか。(読売・社説)