かいふう

近未来への展望や、如何に。

ヨーロッパから.その1

kaihuuinternet2006-06-26

【ロンドン=中村宏之】鉄鋼生産世界2位のアルセロールルクセンブルク)は25日、取締役会を開き、同業で世界1位のミッタル・スチール(オランダ)の新たな買収提案を受け入れ、合併することで合意したと正式発表した。

ミッタルも同日、同様の発表を行った。

合併後の新会社は、粗鋼生産量年間1億トン超、世界シェア(市場占有率)10%に達する。同業3位の新日本製鉄の3倍以上の規模の巨大鉄鋼メーカーが誕生することになる。

アルセロールはミッタルからの敵対的な株式公開買い付け(TOB)提案を拒否してきたが、ミッタルが買収価格を約7%引き上げ、雇用の維持を約束したために、受け入れを決めた。

両社の発表によると、ミッタルはアルセロール株を1株当たり40・4ユーロ(約5880円)と評価し、買収総額は約268億ユーロ(約3兆9000億円)規模となる。新会社の名称はアルセロール・ミッタルとし、本社はルクセンブルクに置く。(2006年6月26日読売新聞)
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昔々、本屋で手にした入門書、ページを開くと、『鉄は国家なり』という、明治維新からか知らぬが、それを著者が引いていた。{富国強兵}、列強進出、で大艦巨砲主義とくれば、満鉄、商船とくる。軍用車もタンクも、鉄筋も、そして何もかもがだ。
更に昔、「蘭学」なるものを志した者も輩出した。
そして今、EUは通貨統合果たしたんだっけ、かとおもう。
この国のその業界人、武者震いする栄誉を、受け取ってるんでないか。
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[鉄鋼大再編]「急務になった『合併基準』見直し」

巨大企業の誕生は、日本の鉄鋼業界にも衝撃だろう。

鉄鋼世界首位でオランダ籍のミッタル・スチールと、2位でルクセンブルク籍のアルセロールが合併する。アルセロールがついにミッタルの買収提案に応じた。

ミッタルはM&A(企業の合併・買収)を駆使して、東南アジアや中南米などの鉄鋼会社を次々に傘下に収め、急成長してきた。“業界の風雲児”である。

今は低価格の汎用(はんよう)品が中心だが、自動車向けの薄鋼板など高級鋼材分野を得意とするアルセロールとの合併により、一段と存在感を増すはずだ。

合併後の粗鋼生産量は、1億トン超に達し、国内最大手で世界3位の新日本製鉄の3倍を超える。

ミッタルは次に東アジアを狙う、との観測がくすぶる。技術水準が世界一と言われる日本メーカーは格好の標的だ。

日本では川崎製鉄日本鋼管が合併してJFEスチールが誕生した。新日鉄住友金属工業神戸製鋼所は、株式の持ち合いを含む提携強化策を打ち出すなど買収防衛に躍起となっている。

だが、海外からの本格的な敵対的買収に、どこまで抵抗できるか不透明だ。外国勢に規模でも対抗できるよう、合併という選択肢も用意する必要があろう。

その障害になっているのが、企業合併の是非を判断する公正取引委員会の合併審査基準だ。基準は、原則として合併を認める分岐点を「合併後の国内市場シェアが35%以下」としている。

経済産業省は、国際的な企業再編をにらみ、このハードルを「原則50%以下」に緩和することを求めている。政府・与党の経済成長戦略大綱も、「今年度中の基準見直し」を明記した。

鉄鋼業界は、自動車や電機業界などと協力し、それぞれの製品に最も適合する鋼材を提供している。製造業全体の競争力の源泉でもある。外国企業の傘下に入ると、日本独自の生産体制を維持できなくなる恐れもでてくる。

グローバルなM&Aは、化学、薬品などの業界でも活発になっている。今後、国内の様々な業界で、規模拡大を模索する動きが出てくる可能性がある。

合併審査基準は、こうした時代の変化に合わせて、見直すべきである。

ただ、単純な基準緩和は、公取委の裁量の余地をかえって狭めてしまう。

「シェア35%超」について、「競争制限につながらなければ統合可能」などと明記する。海外企業との競争状況など、シェア以外の判断基準も導入する。そうすれば、合併で国際競争力のある巨大企業が誕生しやすい環境が整うはずだ(2006年6月28日読売新聞・社説)

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世界最大手の鉄鋼メーカー、ミッタル・スチール(オランダ)が、同業2位のアルセロールルクセンブルク)に行った買収提案が大詰めを迎えている。

創業者でインド出身のラクシュミ・ミッタル会長(56)のビジネスには、二つの特徴がある。

一つは、経営戦略の柱に買収を据えていることだ。2000年以降だけでも、ルーマニアチェコポーランドなど9か国で買収を繰り返した。昨年、米ISGを傘下に収め、生産量世界一に躍り出た。

もう一つは、経営の「無国籍」ぶりだ。

インドネシアで起業し、母国インドにはほとんど経営基盤がない。主要生産拠点は北米と欧州にあり、オランダに本社を置く。本人はイギリス在住だ。

上場企業だが、ミッタル家が株式の87・5%を握る。特定の国に足場を置かず、一族以外の株主とも距離を保つ「ミッタル帝国」の姿が浮かんでくる。

一方、買収提案を受けたアルセロールは、仏ユジノールと、ルクセンブルク、スペインの鉄鋼会社の計3社が02年に友好的に合併して発足した。ルクセンブルク政府が筆頭株主で、経営は3か国政府や地域、労働者の調和を重んじる「欧州モデルの典型」(英フィナンシャル・タイムズ紙)である。

欧州では、「鉄は国家なり」は、死語ではない。欧州連合(EU)の原型は、独仏政府などが1952年に設立した資源の共同管理組織、欧州石炭鉄鋼共同体に遡(さかのぼ)る。その後も各国政府は鉄鋼業に関与し、仏政府は82年から95年まで、ユジノールを国有化したこともある。

同じ鉄鋼業でも、ここまで経営哲学が違えば、買収が友好的に進むわけがない。ドビルパン仏首相は、「経済分野でも愛国心動員を」と国民に呼びかけ、アルセロールはロシア企業との合併という“奇策”まで繰り出して、「ミッタル逃れ」を図っている。だが、ミッタル氏は「最後に決めるのは株主だ」と意に介さない。

日本でもここ数年、「企業は株主のものか」「株主だけでなく、従業員や顧客、地元を含むステークホルダー(利害関係人)のものか」という議論が繰り返されてきた。鉄鋼業という伝統的な製造業にも、投資ファンド並みに株主利益を前面に打ち出した企業が現れてきた現実を重く受け止めるべきだろう。

ミッタル氏は規模の飽くなき拡大を公言している。有力メーカーがひしめく日本が次の目標になっても不思議ではない。

アルセロール発足が決まった01年春、ユジノールの副社長にインタビューした。「再編は始まったばかり。他の企業が我々に続いてほしい」と述べていた。自らがターゲットになるとは思わなかったに違いない。(経済部次長 斎藤 孝光)(2006年6月26日読売新聞)