かいふう

近未来への展望や、如何に。

もうひとつのCDアルバム「千の風」発売。

全盲のソプラノ歌手、塩谷靖子(しおのや・のぶこ)さん(63、東京都板橋区)のCDアルバム「千の風」が21日、発売される。

英語の詩「A Thousand Winds」を塩谷さんが翻訳し、都内の高校生が作曲した作品がタイトル曲。声楽にかける塩谷さんの情熱に賛同した桐朋学園大、東京芸術大の現役学生が、編曲やオーケストラ演奏を担当した。

塩谷さんは鳥取県境港市出身。先天性緑内障のため8歳のころ視力を失った。猛勉強の末に入った東京女子大を卒業後、コンピュータープログラマーとして働いた。声楽が好きで、高校時代からドイツ歌曲などを自己流で歌っていたが、子育てが一段落した42歳の時、声楽のレッスンに通うようになった。

点字の楽譜を自宅のピアノの前に置き、発声練習を繰り返した。1995〜97年には主に音大出身者が出場する「奏楽堂日本歌曲コンクール」で連続入選。このころからコンサートで歌を披露するようになった。2002年には自主制作のCD1000枚を制作、友人に配るなどした。

そのコンサートを通じて04年10月、桐朋学園音楽学部4年の中島伸子さん(49)(東京都練馬区)と知り合った。中島さんも子育てが一段落した45歳から音楽を学び直し、現在は2度目の音大生。塩谷さんの透き通るような声にほれ込んだ中島さんが「なんとか広く紹介したい」と音楽関係者に掛け合い、今回のCD制作が決まった。

CDの中心に据えるのは「千の風」。もととなった詩は米同時テロの追悼セレモニーでも朗読され、世界中で親しまれている。亡くなった人が残された人をいたわる内容で、最近では作家の新井満さんが翻訳、作曲した「千の風になって」をテノール歌手の秋川雅史さんが歌い、ヒットした。

今回、作曲を担当したのは東京自由学園1年の吉野慶太郎さん(16)。柔らかなメロディーに乗って、塩谷さんが「泣かないでください 私のお墓で そこに私はいません 千の風になり ほら 私は吹き渡っているのです」と歌い上げる。

CDにはこのほか、日本や欧米の愛唱歌など全15曲を収録。中島さんの呼びかけで、現役学生が編曲や演奏を買って出た。

塩谷さんは、「ここ数年に相次いで両親を亡くし、『千の風』の歌詞は今の私の心に深く染み込みます。このCDを聴いて、命の大切さを多くの方にかみしめてほしい」と話す。

CDは3000円。問い合わせはアットマーク(03・5770・5878)へ。(2007年2月21日読売新聞)