かいふう

近未来への展望や、如何に。

宗教法人VS役所

kaihuuinternet2007-03-30

靖国問題資料]「やはり新たな戦没者追悼施設を」

靖国神社問題に関連した収集資料をまとめた「新編 靖国神社問題資料集」が国立国会図書館から刊行された。

「BC級戦犯」の合祀(ごうし)をめぐり、当時の厚生省職員が靖国神社社務所に出向き、協議していた記録などが収録されている。その中には、厚生省側が、「目立たないよう合祀に入れては如何(いかが)」と神社側に提案して、合祀を受け入れるよう促している文書も含まれている。

1956年以降、厚生省は合祀の資格要件に該当する戦没者について、神社からの照会に応じる形で、都道府県などの協力も得て「祭神名票」を作成し、神社に送付していた。

その延長線上で、「BC級戦犯」の扱いに関しても、厚生省と靖国神社が相談しながら進めていた。

一方、厚生省が66年にいわゆるA級戦犯祭神名票を神社に送ったという事実も、今日ではよく知られている。

しかし、「A級戦犯」の合祀の真相に迫る資料は一切なかった。そのことを含め、従来の常識の範囲内にとどまる資料集であって、新味はない。

靖国神社に「A級戦犯」14人が合祀されたのは、祭神名票が送られて12年後の78年のことである。それが、今日の靖国神社の「A級戦犯」合祀をめぐるさまざまな議論の発端になっている。

東条英機元首相ら「A級戦犯」を裁いた極東国際軍事裁判東京裁判)については、戦犯容疑者の選定基準や、その枠組みの妥当性などをめぐって、少なからぬ疑問がつきまとう。

読売新聞は昨年、東京裁判とは距離を置いて、昭和戦争当時の政治・軍事指導者らの戦争責任について、国民の視点から検証作業を行った。

例えば、日米開戦時の閣僚だったという以外に戦争責任が見当たらない「A級戦犯」がいる一方で、日中・日米戦争で重大な開戦責任があるにもかかわらず、訴追を免れた軍事官僚たちもいた。

A級戦犯」の多くが、昭和戦争の責任者と重なった。検証の結果、最も責任が重かった東条元首相をはじめとする多数の戦争指導者が、靖国神社に合祀されている。

しかし、靖国神社神道の教学上、いったん合祀した「A級戦犯」を分祀することはできないと主張している。

宗教法人である靖国神社の意向に反して、政府が分祀を強制することは、憲法上できない。とすれば、千鳥ヶ淵戦没者墓苑の拡充による国立追悼施設の建立など、新たな戦没者追悼の方法を検討していくべきだろう。(読売・社説)