安倍首相は25日の衆院厚生労働委員会で、保険料の納付記録が年金額に反映されない「公的年金の支給漏れ問題」に関する政府・与党の対策を明らかにした。
時効となる過去5年を超える支給漏れも、全額補償する救済法案(議員立法)を秋の臨時国会に提出することに加え、受給者が領収書をなくしていても、保険料納付の事実を確認する新たな手続きを策定する方針を打ち出した。
さらに、該当者不明の納付記録約5000万件の全件調査を今後2年程度をめどに実施し、問題の全容解明を目指す。
安倍首相は委員会で、「国民の視点に立って、行うべきことはすべてやるように指示した。救済の立法措置は、政府・与党一体となって実現に努力する」と強調した。
年金支給漏れをめぐっては、自分の年金額や加入歴に疑問があっても、過去に保険料を納めたことを証明する領収書がなければ、社会保険事務所の窓口などで門前払いされることが大きな問題となっていた。
だが、「数十年も前の領収書を持っている方が珍しい」との批判が強いことに配慮し、政府は、領収書がなくても可能な新たな確認手続きを策定するとした。具体的には、会社勤務の事実がわかる履歴書や社員名簿なども審査対象とし、合理性があれば、領収書に代わる証拠として認める考えだ。
一方、国会審議では、社保庁のミスで、10年以上にわたる支給漏れ被害者の存在も判明し、過去5年分しか国が補償しない現行の時効制度の適用を除外すべきだとの意見が出ていた。
5000万件の全件調査では、問題がありそうな約2880万件を中心に、年金受給者の「名前」「生年月日」「性別」などで検索し、関連がありそうな記録が見つかれば、本人に注意喚起する通知を行うとしている。検索には新しいソフトウエアの開発が必要で、調査には約10億円の費用がかかるとしている。
また、年金の加入期間が25年に満たない無年金者も、市町村が保管する古い書類も含めて、関連する記録がないかどうかを調べる。記録が見つかれば、年金受給権が発生する25年以上の加入期間を満たす可能性があるためだ。