かいふう

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国の認定基準を否定、熊本地裁判決。

広島や長崎で被爆し、原爆症認定申請を却下された熊本県内の21人(うち6人死亡)が、国に却下処分の取り消しと1人当たり300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、熊本地裁であった。

石井浩裁判長は、国が2001年に導入した認定基準について「あくまで一つの考慮要素として用いるにとどめ、被爆者の病状や当時の状況、行動などを総合的に考慮して検討すべき」と指摘し、19人について放射線と疾病との因果関係を認め、却下処分を取り消した。

しかし、残る2人のC型肝炎や関節機能障害などについては、放射線との因果関係を認めなかった。損害賠償請求は、いずれも退けた。

全国17地裁で起こされた原爆症認定訴訟で、6件目の判決。今回の判決はこれまでの5地裁と同様、国の認定基準を否定しており、国は認定制度見直しを強く迫られそうだ。

原爆症の認定は、爆心地からの距離で被曝(ひばく)線量を推定する計算式(DS86)で判断されてきた。しかし、2000年に最高裁がDS86について「未解明な部分が残る推定値」と指摘したため、01年以降は、被爆時の年齢、性別などで算出する原因確率を組み合わせた新基準を採用している。訴訟では、この認定基準の妥当性が争点となった。

石井裁判長はDS86について「近似値的な推定値にすぎない」と指摘。「少なくとも1・3キロ以遠での被爆者は、DS86に依拠した認定基準を機械的に適用すると、実際より低くなっている可能性がある」とした。

原因確率を算出する際、残留放射線による内部被曝が考慮されていない点についても、「内部被曝は実際には大幅に多いものになる可能性が否定できず、この影響を考慮しないのは相当ではない」と批判。原因確率による判断には「問題の余地がある」と判断した。

自民党は5月、基準緩和を検討する小委員会を設置し、広島市で訴訟原告から意見聴取するなどしている。(読売)
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掲載は、以前の判決の際のもの。