かいふう

近未来への展望や、如何に。

TVの面目躍如.その49。ある映画監督の追悼番組。

kaihuuinternet2007-12-23

NHK教育「ETV特集 監督 熊井啓」を見た。
先に訃報を知り、その日に載せようかとおもいましたが、本日、そうします。
自分の書棚にあるシナリオ年鑑「‘64」、「‘65」を開けると、それぞれ「帝銀事件・死刑囚」、「日本列島」に熊井啓さんの名を見る。この年鑑は社団法人が編者なので、それぞれ脚本も兼務の監督作品なのである。
仕事量が大きい。
帝銀事件・死刑囚」では、戦後の未だ東京オリンピック前の、暗い世相に、集団殺人事件があって、犠牲者の数と、そしてその犯人が特定されず、逮捕者が出て、誤審か否か、よもや冤罪という想いは、法治国家から連想して、様々な疑問を投げかけた。
ひとりの映画作家として、冤罪として描くためには、観客に同意を求めるがゆえに、脚本執筆まで引き受けなければという、その執念が感じられました。
「日本列島」も、登場人物に通訳等の英語の台詞が多々あって、原作との比較は知らぬが、労作だと。
終わりに、記者に言わせる「バッキャロー、沖縄だって、日本列島の一つじゃねえか」。映画の大画面で、この声を聴く観客への効果の程、購入した少年にも想えました。
忍ぶ川」も観た。観た、が映画館でとは断ってないから、TVだったろう。えぇ、あの初夜のシーン、モノクロでの光源やら、美術は木村威夫さんだったんだ。
あのカラーの傑作、高橋英樹主演「刺青一代」の美術もたしか彼。
この映画頃からか、世にサユリスト、コマキスト、のマスコミの応援団ができたのは。

「地の群れ」も印象に残る。これは、事実の事件ではなかっろう。井上光晴原作で、被爆者部落と、被差別部落の、その少年少女の間に起きた事を扱ったとしても、問題提起は鋭いにしても、抱えたものが暗くて重い、しかも重ねて。興行収入は期待できるとは、算盤弾かない。でも、親の金で映画館に行かない少年少女、彼ら学校外でTVで観たなら、やはり考えさせるだろう。
そして、三船敏郎さんと石原裕次郎さんが組んだ大作「黒部の太陽」も熊井さんの監督で共同脚本だ。某誌に載った半円形の隧道のセットのロケの取材写真、地下湧水で所員が押し出されてくるシーンの撮影現場。故郷が信州で雄峰を仰いで育った自然環境の良さ、を羨ましくおもいました。
これは、「朝やけの詩」という、評論家の云う失敗作も観た。高橋惠子さん主演で、山麓の貧しい農家が、宅地造成で追い出される。カラーで自然は見せたけれど。この試写会なぜか、公会堂にまで行っている。壇上挨拶する主演者の彼女が北海道出身は知っていた。
今日のNHKの番組取材では、「海と毒薬」の出資に、なんと熊井監督が原作者狐狸庵こと遠藤周作さんまで連れ出したのには、そしてやっと承諾させて、公開したら客の入りは延長。作品画面外のエピソードもドラマチックで、そういう楽屋話を視聴者に公開させるのも、TVの面目躍如。

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遠藤周作「わたしが・棄てた・女」の舞台化された、ミュージカル「泣かないで」♪を観た原作者が泣いた。
門外漢ですが、それは、俳優という身体をかりて具現化された、その事に、望外の幸福感を覚えたのでしょうね。生身で眼前に今、観ている、のが見ている、に等身大で圧倒的に、両の手に収まる小説という書物、から抜け出して、その作者本人が受け止めた。
だから、俳優という職業も、監督も、生計がなりたつのみならず、名声も栄誉も残る訳でして。あぁ、こういう言い回しが、門外漢なんだなぁ。ごめんなさい。

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直後、載せてくれた『You Tube』を観て、私メも泣きました。
インターネットで、ただで、わずか3分といえど、視聴出来た事、に。それは、この作品がミュージカルされる、とは想いもよらぬ事、でしたし、歌い乱舞する若いタレントたちを、ここまでこの国のミュージカルも着た、という感慨です。
思い出したなぁ。映画のシナリオ、第何稿かまで、のその縦に細長い大判の白い手ごたえを。70年前後の夏季講座で、講師の浦山桐郎監督が、その気苦労を述懐されていた。
もう、主演の河原崎長一郎さんも、監督の方へ往かれたのですね。
業界が違っても、彼らの発言やら意見は作品も含めて、せめてヒントにしたいですね。

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浦山桐郎監督も『生きる』をあげていました。
キューポラのある街」、「非行少女」を撮ったからでしょうか。
広義でのお役所仕事が、最近の某事件のように、解決がままならぬからでしょうか。
名作はそれとして、映画館から出て、たった今館内で観た劇を、複雑な社会状況を海外まで監視する視界をも培うきっかけにしたいですね。
映画を製作する側になれなかった、その夢を、形を替えて、観た作品の価値に匹敵する、そのような事を皆で仕上げたいものです。
例えば、民主化とか。