「連帯」という組織が、東欧のポーランドという国で、成し遂げた。
それは、始めは、グダニスクという造船所が在る都市の、労働者争議であった。
「連帯」委員長のワレサは、後に、ポーランド共和国の初代大統領になった。
アンジェイ・ワイダ監督の「鉄の男」は、その話である。映画の主人公が、ワレサをモデルか、その事さえ知らない。観てもいない。「大理石の男」があって、「鉄の男」だから。しかし、「鉄の男」の国際的評価と数ある受賞によって。
彼のデビュー作から一貫して来た思想信条が、見えて来た。共産圏からの離脱である。
そして、集大成が、「カチンの森の事件」の映画化、監督である。
私が十代の時、リーダーズダイジェストなる雑誌があった。ハンディタイプで外出時も読める。時に企画ものがあって。「第二次世界大戦秘話」という10センチ弱のハードカバー。「諾」で申し込むと、届いた。そのひとつ、「カチンの森事件」を読む。
終戦。敗戦処理のドサクサで、その虐殺事件の首謀国が判らない。勿論、敗戦国側も、その真相解明に時間などない。つまり、「地下水道」のあれ。あの時の、上の奴らか。対岸の奴らか。どっちが犯罪者か。
答えは、出た。上の奴らか。対岸の奴らか。上の奴らナチズムは敗れた。消えた。
しかし、あの時の対岸の奴ら。形を変え、国を代え。
映画「カチンの森」が公開され、訪日されたワイダ監督夫妻が、NHKのTVでのインタヴューに答えて。実は、この事件の被害者たるポーランド軍将校の中に、ワイダ監督の父親が居た。その話もされた。その執念だろうに、驚かされた。