かいふう

近未来への展望や、如何に。

「富広美術館」から銅街道。

鉄にふれたので、銅(あかがね)にもふれておこう。
先月のコスモス街道をあきらめて、向かった先が群馬県の複合福祉施設である。途中地図に遺跡のマークが付いていたので、それを探した。前方に下校するひとりの男の子がいる。話掛けて聞くと、場所を案内するという。稲刈りを終えた田んぼの隅、よく見ればそれとおもわれる縄文・弥生時代の住居址だか貝塚跡だか。こちらの車に併せて走ってくれた少年に、「カロリーメイト」の1箱の半分、すなわち1袋を手渡した。不満そう。走り去った。
幅のない路の左手にあるは更生施設で通所と収容を兼ねている。右手に競技場のグラウンド。それに隣接して3階建ての近代的デザインの総合福祉会館とでも呼ぼうか、1階にリハビリ兼用の市民にも開放された温水プール。それを中央に各階に部屋を備え、その廊下壁に額縁入りであるのが、星野富広さんの詩画の数々。ひとりの福祉対象者にこだわるな、というのが感想であったが、これが後日覆される。
弘法大師所縁の神社に寄ったら日没近い。コンビニ近くの電話ボックスから、草木湖銅街道沿いの民宿に電話したら1名でもいいというので、すぐ予約していた老神温泉のホテル旅館に、これから赤城越えで行くのは不安だからキャンセルしたい旨告げたら、それでもどうぞというので、再度の民宿には断りを入れた。皮手袋にガス満タン。「天城越え」♪ならぬ{赤城越え}である。地図を頭に入れる。日没の夜道である。しかもヨソ者の初見参。迷って、パンクして、凍死しても知らん。
電力会社の研究所を左折して、蛇行を登ればいいんだ。二又の分岐に来て、迷った。ここで間違えるとヤバい。左折して急勾配を上がると、若い男が自転車扱いでる。躊躇なく声掛けた。そうだと云う彼を脇に見て登った。この上に住んでるのか、毎晩通うの大変だな。
山頂の国民宿舎も考えたが、もう遅い。誰も通らん。自分のクルマのライトだけ。ただいまの温度表示計が時々前方に顔出してくれる。携帯カイロを左右ポケットに入れて、やっと。鼻たれ小僧は行く。月光仮面の気持ち少しワカります。「赤城の子守唄」♪は確か東海林太郎だ。さすが月見上げても、忠治親分は顔見せなんだ。「いい湯だな」♪が待っているハズだ。
左に闇夜に白く浮かんだのは、大沼の湖面だ。あのワカサギ漁でにぎわうところ。どうやら登りきったようだ。
数時間かけて名物鍋をたいらげて、夜遅いからと用意して待ってたら、来たのはボイラー係りか、先ほどの若い仲居さんではない。手荒に布団敷いて消えたので、懐のチップを出す間もない。ホテル旅館とは、和洋折衷だろう。しっかり元取ろうと、露天風呂に行く。
翌日、追われるように出る。チップを渡さず、自作テープを置いて来たからか。この時のは、詞が未改定であった。この温泉郷には、牧水館という名の旅館もあるので、若山牧水の歌碑を訪ねた。そこまでの道のり、地元農家の軒先には、干し大根だか干し柿だかが目に入り、なつかしい。若い人も旅人をまっすぐ見る。自然をそのまま体現している彼らに、いつも憧れてしまう。郷を走り回った。村の墓地前で二人連れと会った。多分自分から声掛けたのだろう。若い男と並んで盲目の女の人は、彼の母親らしい。今しがた尋ねた、関取の旗を何本も掲げた旅館、そこでの消防講習に集まるためらしい。
この国有数の大きな滝、吹割の滝がある。カメラのレンズ替えを繰り返し上流まで沿って歩いたら、母娘がマフラーを落としていった。届けた記憶があるのだけれど、自分の顔見て、年寄りねと聞いたのはその時の母娘かは忘れた。
草木湖畔の国民宿舎に泊まる。対岸に「富広美術館」がある。
翌日館内を一巡して、感想をノートに書く。告白する。自分は彼にシットした。そんなことしか書けなかった。なんなのだろう、この気持ちは。彼の詩画は、真似ができない。しかも、先日観た、福祉会館の壁の数々の作品。みんなが彼のタレントを認めている。県単位ではない、全国の人びとが。脱帽である。福祉のこころ、みんな知ってる訳だ。周りが暖かい。温泉に浸かれる県だから、だけではあるまい。これは、おそらく自然が源。その懐に抱かれているからゆえだろう。
かって研修旅行で同僚が運転で、車内から足尾銅山跡を見たから、あの時「こころみ学園」への途中か帰り、この銅(あかがね)街道を通ったのだ。今それを家路へと下る。「道の駅」ならびの陶芸館では水芭蕉の図柄のカップも観て、第三セクターか、わたらせ渓谷鉄道とそれに寄り添う渡良瀬川、それを眼下に、童謡ふるさと館にも立ち寄った。そして星野さんの母校小学校の木造校舎も見て、大間々町、現みどり市に至る。高津峡では武士の五輪塔が囲みで休み、近くの修道院までも見た。
学生時代、「明治の柩」という舞台に参加した。足尾鉱毒事件の田中正造の伝記物である。これが後劇映画「襤褸の旗」となって上映される。この時の農民役のひとりが、NHKTV大河ドラマ翔ぶが如く」の西郷どんを演じた西田敏行さん。最近の家康役も当たり。