かいふう

近未来への展望や、如何に。

新首相が所信表明演説。

安倍首相は29日午後の衆参両院本会議で、所信表明演説を行った。

政府の憲法解釈で禁止されている集団的自衛権の行使について、首相は「個別具体的な例に即し、よく研究する」と、具体的な研究作業に着手する方針を表明した。戦後生まれの初の首相として、新たな国づくりを進める決意を強調。

憲法改正の手続きを定める国民投票法案の早期成立に期待を示し、教育再生に取り組む考えを示した。また、経済成長を高め、歳出削減を徹底することにより、「国民負担の最小化」を目指す方針を明らかにした。

首相は、集団的自衛権行使の問題で研究を始める背景として、テロとの戦いなど国際情勢の変化と、日本の国際貢献に対する期待を挙げ、「日米同盟がより効果的に機能し、平和が維持されるようにするため」と説明した。

これまでは集団的自衛権の行使に当たるとされてきた事例について個別に研究し、個別的自衛権と判断できる場合は、その事例は合憲となる。例えば、海上自衛隊と共同行動している米海軍の艦船がミサイル攻撃を受けた場合に、1キロ・メートル離れた所にいる海自艦船が反撃する事例など、現在は集団的自衛権の行使とみなされている事例について研究する見通しだ。

また、首相は演説で、自らが目指す国のあり方について「活力とチャンスと優しさに満ちあふれ、自律の精神を大事にする、世界に開かれた『美しい国、日本』だ」と主張。官邸機能の抜本的強化を強調した。

憲法改正に触れ、「新しい時代にふさわしい憲法のあり方について、与野党で議論が深められ、方向性が出てくることを願っている」と述べた。

外交・安全保障分野では、官邸の司令塔機能を強化し、日中、日韓関係について、「未来志向で、率直に話し合えるようお互いに努めていく」と述べた。

教育改革について、教育基本法改正案の早期成立を目指すとともに、教員免許の更新制度、学校の外部評価を導入すると表明。こうした施策を推進するため、内閣に「教育再生会議」を設置すると述べた。

財政再建に関して、「成長なくして財政再建なし」と強調。経済成長を維持し、国民負担の最小化を第一の目標に歳出削減を徹底する考えを示した。2007年度の新規国債発行額は、今年度の29兆9730億円を下回る規模に抑え、公務員の総人件費削減、国の資産の売却などに努める考えを表明。消費税引き上げについては「逃げず、逃げ込まず、という姿勢で対応する」と述べるにとどめた。

経済成長を高める具体策として、技術革新をどう進めるか、2025年までの指針「イノベーション25」を作成すると述べた。

また、「誰でも再チャレンジが可能な社会」を目指すと表明し、具体策として〈1〉パート労働者への社会保険の適用拡大〈2〉再チャレンジを支援する民間、自治体に対する首相の表彰制度の新設――などを挙げた。(2006年9月29日読売新聞)