三洋粉飾疑惑「信頼を失えば経営再建は遠のく」
企業の「成績表」である決算に疑義が生じれば、安心して投資することはできない。
経営再建中の三洋電機で、2004年3月期などの決算に、粉飾の疑いが出てきた。
保有する子会社株の評価損を過小計上していた疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が調査を始めた。
決算を承認したのは、またも中央青山(現みすず)監査法人だ。みすずと、前身の中央青山は、カネボウの粉飾決算への関与や、日興コーディアルグループの不正会計処理見逃しなど、不祥事が相次いでいる。
監視委は、三洋と中央青山の判断の妥当性を厳しく検証する必要がある。三洋も情報を正確に再開示し、投資家の疑問に答えねばならない。
三洋は03年3月期連結決算で、家電や半導体の不振などから、過去最大となる616億円の最終赤字を計上していた。だが、04年3月期は、一転して134億円の黒字となった。
この決算で、三洋は半導体製造などの子会社株などについて巨額の損失処理を迫られる可能性があった。だが、2期連続の赤字決算を避けようと、不適正な経理処理をしたことが疑われている。
企業会計のルールは、子会社などが業績不振でも、将来の回復が合理的に説明できれば、株式評価損の処理を先送りすることを認めている。
三洋と中央青山は、子会社の業績回復が見込まれるとした。問われているのはその判断が適正だったかどうかだ。
三洋は06年3月期連結決算で、2056億円もの税引き後赤字を計上した。一連の損失を処理した結果だろう。
03年初めは約300円だった三洋の株価は、1年後に600円を超えた。問題の決算が粉飾ならば、業績回復を評価した投資家を欺いたことになる。
洗濯機などの白物家電やデジタル家電の値崩れなどで、三洋の業績は低迷している。創業家一族の経営が続き、風通しの悪さも指摘されてきた。05年秋には、関係金融機関主導の経営に移行したが、業績改善のめどは立っていない。
不祥事が続発したみすずは、業務を他の監査法人に移し、事実上の解体に追い込まれる見通しだ。
市場の信頼を裏切れば、企業だけでなく監査法人も退出を迫られる。
三洋のケースでも、経営陣と公認会計士の間に、なれ合いなどがなかったか否か、きちんと調べる必要がある。
すべてを明らかにして市場の信認を回復しなければ、三洋の経営再建はますます遠のくだろう。(読売・社説)