かいふう

近未来への展望や、如何に。

ある伝説

「カナダへの手紙」 

ハーイ!ジェーン姉さん 

あの時、あなたは、やっと閉じ込められた息苦しい戦争から、終わって。ひと息付いて、久しぶりの映画館。出て来て、今観た画面のあれこれを回想してたに違いない。

そうしながら、視界にジープが走ってきた。まさか、そのハンドルを握ってるアメリカ兵が、泥酔してるとは。誰も思わない。

英語が得意だったあなたは。若い日本の女を見た、その若いアメリカ兵が、こちらを見て。彼が、手前で停止したなら。道を尋ねをしようものなら。その時日本に居る女で、極上の英会話ができる。そんな私を、彼に知らしめよう。そう思っても、何ら不思議はない。

しかし、その泥酔米兵のジープは、今観た映画の、その中のワンシーンのようではなく。目前で、カッコよく止まらなかった。

衝撃で、この地上の光景に、瞼を閉じた。

フェイドアウト

ジェーン姉さん。 僕があなたを知ったのは、極最近です。

あの世間知らずの。しかし、彼女が悪い訳でもない。「東京ローズ」は私、とマスコミに公言した当の本人も、また戦後数奇な運命に翻弄されたのだから。

しかし。それでも、やはり。「東京ローズ」のメインは、あなたでしょう。

ミステリアスだけで終わらない。それは、あなたが29という若さで逝ったからですよ。

僕はもう、あなたの倍も生きてしまった。

それ故、その若さで消えた事、の。

つまり、その。ミステリアスだけで終わらせたくないんです。

シンシアリー