「剣をとる者はみな、剣で滅びる。」
マタイによる福音書第二十六章52
写真である。モノクロ。解放する連合軍が到着した直後の、光景である。
名画「地下水道」ではラストシーン。マンホール上のナチズム。鉄格子の対岸は、傍観を決め込むコミュニズム。
ならば、写真のモノクロは、退却するナチスが、【悪魔】の命令での、殺害現場。
重なり倒れた市民たちの片隅に、ひとりだけコスチュームを着た少年の遺体が上にある。
そういえば、昔見たことある。フレンチポップス♫のミッシェル・ポルナレフ。彼も宇宙人とは行かないまでも。そんなステージ衣装で、サングラス掛けてたな。
カラーでないから。コスチュームの少年も、衣装内で失血したか。伏せています。サングラス風マスクかけたまま。
もしかして、少女。
援軍到着まで、持ちこたえれば、いいのだ。でも武器の有無。火器の差は歴然。
少年まで、配布は及ばぬ。よって、ただ殺される。でも、それはないのだ。
戦場における、10年の年齢差は大きい。彼は、10年後に武器を取って。闘いたかっただろう。けど、叶わない。
彼は、見たくなかった。その肉眼で、良識ある大人が、機関銃連射で90°、同じ町内会の仲間たちを一瞬で、消し去る。眼前の敵を。
武器なき最善の努力。その少年は為した。