かいふう

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社会保険庁の改革.その22。「社保庁改革」と「年金時効撤廃」、両法案が衆院可決。

kaihuuinternet2007-06-01

社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案は1日未明の衆院本会議で、与党の賛成で可決され、参院に送付された。

今国会で成立する見通しだ。野党は本会議で、衆院議院運営委員長と厚生労働委員長の解任決議案、柳沢厚生労働相不信任決議案を相次いで提出し、採決に抵抗した。

社保庁改革関連法案は、2010年に社保庁を解体し、非公務員型の新法人「日本年金機構」を設立する内容だ。年金時効撤廃特例法案は、年金請求権の時効(5年)を撤廃し、記録漏れが認められた場合、時効以前の年金不足分も補償できるよう定めている。

与党は、早ければ1日、遅くとも安倍首相が主要国首脳会議(ハイリゲンダム・サミット)に出発する前の4日には、参院で両法案の審議に入りたい考えだ。

安倍首相は31日昼、公明党の太田代表と首相官邸で会談し、特例法案の内容を始めとする年金記録漏れの対策を早期に実行する方針を確認した。首相は「年金問題では積極的に対策を打ち出していくことが重要だ」と強調した。

両法案の扱いについては、民主党は31日昼の議院運営委員会で、採決を延期するよう求める動議を提案した。しかし、与党の反対で否決され、民主、社民、国民新の野党3党は逢沢一郎議運委員長の解任決議案を提出した。

午後2時半に開会した本会議で同決議案が否決され、野党側はさらに桜田義孝厚生労働委員長の解任決議案、厚労相不信任決議案を提出したが、ともに否決された。野党側が長時間演説する戦術をとったことなどで審議が深夜に及んだため、河野衆院議長が本会議を6月1日に延長する手続きをとったうえで、両法案をそれぞれ採決した。(読売)
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社会保険庁改革関連法案と年金時効撤廃特例法案が、衆院を通過した。

衆院では、年金不信を払拭(ふっしょく)する地に足の着いた論戦が行われたとは、とても言えない。

年金記録漏れが争点に浮上する中、近づく参院選をにらみ、野党は政府・与党を追い込む格好の材料として追及姿勢を前面に出した。政府・与党も防戦に回って浮足立った。

不完全な年金記録の解消に全力を尽くすのは当然だ。それとともに、年金記録漏れを含め、数々の不祥事を起こした社保庁の全面刷新も図らねばならない。同時に取り組むべき課題だ。

参院では衆院の混乱を繰り返すことなく、論議を深める必要があろう。

だれのものか定まっていない年金記録が、未(いま)だに5000万件も積み残されていることは無論、重大な問題だ。だが5000万人分の受給権が損なわれたわけではない。

一人に一つの基礎年金番号が割り振られる以前の記録であるから、持ち主はかなり重複している。基礎年金番号導入前に亡くなった人のものも多い。現実には3万人弱しかいない100歳以上の人の記録が、162万件もある。

60歳前の人の記録は支給が始まるまでに統合すればよい。支給年齢に達している人や遺族に支給漏れがあった場合は、時効撤廃により、遡(さかのぼ)って全額を受け取れるようになる。

この作業を、出来る限り早急に、確実に行わなければならない。

野党は、積み残し記録の解消にめどがつかない限り、社保庁の後継組織の形を定められないと主張した。それは、社保庁改革を先送りする、と言っているに等しい。喜ぶのは、現在の組織を延命したい社保庁官僚や職員労組だろう。

非公務員型の新組織「日本年金機構」に移行すると、社保庁が残した年金記録漏れ問題の処理がうやむやになる、と危惧(きぐ)する声もある。

だが、新組織に実務が移されても、年金手帳の発行者は厚生労働大臣だ。今後も、国民に不安を与えぬよう、国は年金給付に責任を持たねばならない。

社保庁を非公務員組織にすることは、染みついたぬるま湯体質を取り除くための、ほんの入り口だ。年金支給に関する時効の撤廃も、最低限やるべき手を緊急に打ったに過ぎない。

問題はその先だ。社保庁の後継組織をどう効率的に機能させるか。年金記録漏れの善後策として、さらに何が必要なのか。国民は、こうした点を掘り下げた、建設的な論戦を期待している。(読売・社説)